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第634回「信用取引の魔性に取りつかれる」(高島陽物語13)
昭和28年3月5日のことですが、
スターリン暴落と呼ばれる株の暴落が起こりました。
戦後、ソ連を支配してきたスターリン首相が
重体と報じられ、日経平均株価は37円80銭安の
344円41銭(前日比)と10%もの下げになり、
市場は混乱に陥りました。ただ、この暴落の後
株式市場は反発しました。
この年の6月頃、高島陽さんは兜町に入って、
ちょうど5年目。
療養所を退院して、歩合外交をしていましたが、
別に業績の向上や将来の飛躍も考えられない
平和不動産株までがぽんぽん上がり、
高島さんにはどうしても納得がいきません。
その頃、高島さんには80万円のお金ができていたので、
平和不動産を空売りして儲けることを考えました。
ただ、現実には株価が反発しているので、
保険つなぎの意味から、
平和不動産を信用取引で1万株売ると同時に、
東京海上を同じく信用で1万株買建てました。
東京海上なら業績の向上が見込めるし、
例え不景気でも損保株は固いと考えてのことです。
ところが、7月に入っても、更にしっかりしているので、
思い切って平和不動産の売建てをしまい、
東京海上1万株買建ての一本にしました。
平和不動産の売建てで15万円損をしたので、
担保のお金は80万円から65万円になりました。
でも、東京海上が15万円以上騰がれば、
平和不動産の損は取り戻せると、高島さんは考えました。
ところが、市況がしっかりしており、
たまらず、平和不動産1万株を買い戻しましたが、
その途端にがっちりしていた市況が急にゆるみ、
毎日2円、3円づつ下がるというような弱保合に入りました。
東京海上も毎日、2円、3円づつジリ安を辿りました。
もともとは株はまだ駄目だと思っていたので
平和不動産を信用で売建て、たまたま東京海上を
保険つなぎにし、そのまま東京海上の買建てが残りました。
8月に入ると、下げは足を早め、東京海上は
更に30円下がって買値から50円下値になりました。
証拠金は65万円なので、店から追証を払えと
ヤイヤイ言われ出し、高島さんは
どうしてよいか分別がつかなくなります。
高島さんは、投げるに投げられず
手でしっかり押さえていても
ヒザががたがたふるえ、食事なんかのどに通らず、
信用取引の魔性のとりこになってしまったと
述懐されています。以上は高島さんの
『現代の兵法』に記述にもとづいて信用取引の
体験をなぞらせていただきました。
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執筆者:戸田敦也(2007年05月12日)
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邱永漢思想研究家。経営コンサルタント。問題解決・意思決定の研修講師。昭和18年3月生まれ。昭和40年、東京大学経済学部卒業。同年、八幡製鉄(現新日鉄)入社。平成6年、新日鉄部長を経て、研修業に転じ、現職。以来、邱永漢作品のエッセンス本『原則がわかれば生き残れる』、『アジアの曙』、『生きざまの探求』、『新・メシの食える経済学』(以上、グラフ社)を編集、解説。平成13年『あなたも賢者になれるー私は邱永漢さんの知恵を借りた』(グラフ社)を刊行。邱永漢思想の探求をライフワークとし、その一環として、各地でセミナーを開催。「株式投資の原則」などの通信セミナーも実施。
■戸田敦也さんへのメールはこちらまで: atsunaritoda@gmail.com

