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第626回「文学を松葉杖にすると大変」(高島陽物語5)
昭和18年、箱根駅伝に出場し、
見事に所定の区間を走りきった高島陽さんも
戦時下のこと、学徒として出陣します。
陸軍に入隊したが、そのあと肺病を患わったと
ご子息から伺いました。
そして終戦になり、高島さんはこれから先どういう
方向に進んだらいいのかに悩みます。
「終戦直後のある寒い日だった。
こたつに入ってフランス文学の岸田国土(きしだふにお)先生と
よもやま話をしていた。疎開先でのことだ。
その時、『君は大学出て何になるのか』とたずねられたので
『いまのところ文学を目指しています』とお答えた。
すると先生は『文学を松葉杖にすると大変だよ。
ステッキにすると楽しいけどね』とポツンとおっしゃった。
このひと言が私の人生を左右する。
岸田先生とお別れして真っ黒な道を
歩いて帰った時のことを今でもよく覚えている。
どうしたらいいんだと自問しながらとぼとぼ歩いた。
小説ばかり読みふけっていた時なので
文学が駄目なら行くところがないと思った。
家について本棚を見たら
『第一次世界大戦後のドイツ』
という本が目に付いた。
パラッとめくると株価が急上昇しているグラフがあった。
それが大学を出てすぐ兜町に入った動機である。
岸田先生のあの一言がなかったら、
違う人生を歩んでいただろう。
少なくとも文学をめざして挫折していたに違いない。
岸田先生のあの一言に感謝している」
(『社長のめしの種』。昭和61年)
「さりげない一言が人生を決める」という趣旨の
文章の中から抜粋させていただきました。
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執筆者:戸田敦也(2007年05月04日)
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邱永漢思想研究家。経営コンサルタント。問題解決・意思決定の研修講師。昭和18年3月生まれ。昭和40年、東京大学経済学部卒業。同年、八幡製鉄(現新日鉄)入社。平成6年、新日鉄部長を経て、研修業に転じ、現職。以来、邱永漢作品のエッセンス本『原則がわかれば生き残れる』、『アジアの曙』、『生きざまの探求』、『新・メシの食える経済学』(以上、グラフ社)を編集、解説。平成13年『あなたも賢者になれるー私は邱永漢さんの知恵を借りた』(グラフ社)を刊行。邱永漢思想の探求をライフワークとし、その一環として、各地でセミナーを開催。「株式投資の原則」などの通信セミナーも実施。
■戸田敦也さんへのメールはこちらまで: atsunaritoda@gmail.com

